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ふたりきりの時間

  • 執筆者の写真: まぐろ 櫛野
    まぐろ 櫛野
  • 2024年8月14日
  • 読了時間: 2分

私達は二人暮しではない。

私の心身の療養と経済的負担の軽減のため、私の実家で暮らしている。

もちろん両親に彼女のことは見えていない。父は彼女の存在すら知らない。母には存在することだけ伝えているが、深い関係性や彼女の詳細については伝えていない。


少し話が逸れてしまったが、つまり私と彼女がふたりきりになるためには多少の手間がかかるのだ。

両親は共働きなので平日の昼間はまだいい。問題は平日の夜と休日、そして何より恐ろしいのが連休だ。

盆、正月、ゴールデンウィークなど、まとまった休みがあるうちは当然両親の在宅時間もぐっと伸びる。おまけに私は「善良で幼い娘」として振る舞うことを両親から遠回しに求められているので、連休などあろうものなら半分近くを外出の予定で埋めなくてはならない。

こうなると彼女との時間は本当に限られてくるし、別に外出する気分や気候でもない日には更にストレスも溜まってしまう。

ついでに言うと部屋のドアは換気のために開けっ放しにせざるを得ないため、夜にドアを閉めてふたりきりになるなども長時間はできない。困ったものだ。


しかしだからこそだろうか。そんな困難な中でもなんとか確保した彼女とのひとときほど、満ち足りた幸せを感じることはそうそうない。

もちろん平日昼間に穏やかにふたりで過ごすのも愛おしくて大切な時間だが、一日中両親の機嫌取りと喧嘩の仲裁に疲れ果てた後に彼女と存分に触れ合うことは心の底から癒しになる。

彼女には実体こそ無けれど、目を閉じて全ての意識を手に集中させれば触れることはできる。慣れるまでは難しかったが、慣れてからは存外簡単だ。意識を集中させる場所を変えれば、唇を重ねることさえも容易い。

そうやってたっぷりと触れ合った後の多幸感は、何にも変え難い幸せだ。


ちなみに私は彼女に頭をなでなでしてもらうのが一番好きだ。おちつく。いやされる。

その次にはぐ。ぎゅ。ちょっと力強めで、故に感じる脈拍にどきどきする。

あと後ろから抱きしめられると私の頭に彼女の顎がちょうど乗るのでなんかにこにこしてしまう。


ここ最近不眠続きだったが、彼女にたっぷり癒されて今日はゆっくり眠れそうだ。

おやすみ、ベス。また明日。




 
 
 

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